3 着色


3−1 レイヤー分割

 さて線画ができたところで着色に入るわけですが、ここではレイヤー機能を使います。レイヤーとは何枚もの画像を重ねて一枚に合成する機能で、アニメセルを重ねて撮影するのに似ています。既に輪郭線のみの透過レイヤーを作ってあるわけですから、これを一番上に置き、画面上奥から手前に重ねてゆくように肌・シャツ・上着・エプロン・髪・アクセサリーといった順番で重ねてゆけば、色の干渉を気にせず個々のレイヤー(CG描きはパーツとか呼んだりします)ごとに塗ってゆけるわけです(図 3-1)。

図 3-1
図 3-1 レイヤーの概念


 各パーツごとに輪郭線に沿って塗り分けるのは少々骨ですが、PhotoShop の機能をうまく利用することでかなり楽をすることができます。以下にその方法について説明します。

画面 3-1 (1.6K)
画面 3-1 新規レイヤーの作成
 まず、レイヤーパレットの「レイヤー作成」ボタンを押すか、Shift+Ctrl+N でレイヤーを作成します。レイヤーは輪郭線(outline)と背景(Background)の間に位置するようにしてください。
画面 3-2 (1.0K)
画面 3-2 マジックワンドの設定
 ツールパレットからマジックワンドwandを選択します。マジックワンドとは特定の色や輝度の領域だけを選択するツールです。オプションパレットには左のような画面が出るはずですが、Tolerance とは「許容範囲」の意味で、輝度範囲を 0〜255 としてどこまでを「同一の色」と識別するかを指定します。線画の内部を塗り潰すには原画の状態によって 128〜192 くらいの範囲を使い分ければいいようです。Anti-aliased は選択境界をボカすか、バッサリ切り落とすかを選択します。後のゴマカシが楽になるので(^^;)私はボカす方を選んでいます。
画面 3-3 (1.5K)
画面 3-3 輪郭レイヤーの選択
 塗りつぶし領域を選択する前に、先ほど作成した新規レイヤーではなく、輪郭線のレイヤーを選択します。
画面 3-4 (8.0K)
画面 3-4 塗りつぶし領域の選択
 輪郭線レイヤーに対し、マジックワンドで塗りつぶしたい領域を選択します。選択された領域は点滅する点線で囲まれます。肌のように同じ色で塗りつぶす部分が複数に分かれているときは、Shift を押しながらクリックすることで複数の選択領域を作ることができます。
画面 3-5 (5.1K)
図 3-4 選択領域を拡大すると…
 さてマジックワンドで選択した領域を拡大して見ると、濃淡の幅を持った輪郭線に対し内接する状態になっていることがわかります。このまま塗りつぶしてしまうと、輪郭線との間に「隙間」が開いてしまいます。そこで塗りつぶし領域を1〜2ピクセル広げて、輪郭線に対し「食い込ませる」ようにします。
画面 3-6 (1.8K)
画面 3-7 (0.8K)
画面 3-6, 3-7 選択領域の拡大
 メニューから Select-Modify-Expand を選択します。ここで拡大するピクセル幅を聞いてきますから、1〜3 くらいの範囲(原画サイズに依存、輪郭線の幅の半分くらい)を指定します。
画面 3-8 (4.7K)
画面 3-8 選択領域の塗りつぶし
 選択レイヤーを新規レイヤーに戻し、カラーパレットから任意の色を選んで「塗りつぶし」(Alt+DEL)を実行します。この時レイヤーを切り替えるのを忘れないように!うっかり輪郭線レイヤーを塗ってしまったときは、慌てず騒がずアンドゥ(Ctrl+Z)をかけましょう。PhotoShop 5.0 以降ならば 20 段までのアンドゥ・ヒストリーが使えるようになって、失敗に対する許容度がぐっと上がりました(^^)。

 こうして各パーツごとにレイヤーを「切り分け」てゆきます。マジックワンドによる領域選択では塗り残した部分やハミ出した部分等が生じますので、そういった部分は手作業でタッチアップしてゆきます。
 また肌と髪や服、シャツと上着、など重なり合う関係にあるレイヤーの場合は、レイヤーの接する境界で「下」の色を重なる部分にまで塗り広げ「食い込ませ」ておくことで、レイヤー境界に塗り残しの隙間ができるのを防止することができます。

 レイヤーごとの基本塗りの終わった状態を図 3-2 に示します。原画サイズは 1600×3320 で、縦横 1/4 に縮小してあります。また、レイヤーの切り分け状態を画面 3-9 に示します。ここで見てわかるように、私はレイヤーパレットのサムネイル表示を「NONE」に設定しています。レイヤー間の見通しが良くなることと、サムネイル描画に費やす CPU パワーを省略することで反応速度を上げる効果があります(ただしそのぶん、レイヤーにわかりやすい名前をつけておかないとゴッチャゴチャになりますが)。

図 3-2(20K) 画面 3-9(2.4K)
図 3-2 基本塗りの終わった状態
(クリックすると拡大)

画面 3-9 レイヤー切り分け状態

 画面 3-9 で Background と skin の間に Layer1 というのが入っていますが、ここには無地の青をベタ塗りしてあります。薄い色を塗るときにはこのレイヤーを可視状態にすることで、塗り残しやハミ出しが見やすいようにしています。

3−2 基本着色

 まず、レイヤー切り分けの終わった段階でも「名前を付けて保存」しておきましょう)ちなみに私は step1.psd, step2.psd といったファイル名で作業段階を分けています)。次に、着色に入る前に画像を縮小します。現在作業サイズは 1600×3320 ですが、全体の見通しを良くするためとマシンの処理速度を上げるため縦横 1/2 の 800x1660 に縮小します。この辺の手順には各人いろいろ独自の手法をお持ちだと思いますが…私の場合は輪郭線への「食い込ませ」が楽になるため2倍サイズでレイヤーを切り、そのあと 1/2 に縮小して塗りを行う手法を使っているわけです。

画面 3-10(1.2K) 画面 3-11(2.6K)
画面 3-10 画面 3-11

 さて、いよいよ本格的な着色です。着色にもいろいろ流儀があるわけですが、私の場合は

(1) 基本色でベタ塗り(レイヤー切り分け)
(2) 明度を落とし、彩度を上げた色で影を入れる
(3) 明度を上げ、彩度を落とした色でハイライトを入れる

という手順を取っています。画面 3-12 に PhotoShop の色選択画面(Color Picker)を示します。黒丸で示されているのが現在選択されている色で、これを左右に動かせば明度が変わり、上下に動かせば彩度が変わります。右のカラーバーを動かせば色相が変わりますが、陰影を表現するのに色相を触わることは普通ありません。

画面 3-12(17.5K)
画面 3-13 Color Picker の使い方

 影を表現するのに明度だけを下げるとコントラストが強調されますが、暖かみのない土気色の表情になってしまいます(図 3-3)。一方彩度だけで影を表現しようとすると暖かみは出ますが、わざとらしく不自然な感じにもなります(図 3-4)。

図 3-3(6.6K) 図 3-4(6.6K)
図 3-3 明度だけで影を入れた場合
図 3-4 彩度だけで影を入れた場合

 これも時と場合によるのですが、基本色に対しカラーピッカーのカーソルを「右下」に動かす、すなわち明度を下げ彩度を上げた色で影を入れると自然な感じになる場合が多いようです。彩度と明度の具合をどの位に設定するかは絵描きの「匙加減」であり、センスの見せ所です。

 具体的な塗りのプロセスを図 3-5〜図 3-7 に示しますが、その前に該当する塗りのレイヤーの領域保護が ON になっていることを確認しましょう(画面 3-13)。

画面 3-13(2.2K)
画面 3-13 レイヤー保護をチェック

 さて肌色に影を入れてゆくわけですが、私の場合は次のような手順を使っています。

  1. (図 3-5)まず少し暗めの色で基本となる影の位置決めをします。影を自然に入れるコツは光源の位置を仮定し、光源の反対側となるエッジを軽くなぞってゆくことです。ちなみに作例の場合は右上に光源を仮定し、影を入れるのにはサイズ 35〜65 のペイントブラシツールpaintを「筆圧−サイズ可変」で使用しています。いわゆるアニメ調仕上げの場合、この段階で影入れは終わりとなります(更にもう一段強い影を入れたり、ハイライトを入れたりもしますが)。

  2. (図 3-6)次にサイズ 35〜65 くらいのエアブラシツールbrushを使って影と基本色の境界をボカしてしまいます。透過度は 50〜70 くらいに設定しています。全体のバランスを見ながら、陰影が自然なコントラストになるように注意して調整してゆきます。

  3. (図 3-7)最後にもう一段暗い色を作って、影となる部分を強調してゆきます。この時使うツールもエアブラシですが、大きさや透過度は場所によって適時調整しています。影入れに熱中しすぎると全体のトーンが落ちてしまうので、時々縮小して全体のバランスを確認し、暗くなりすぎた場合は透過度を 10〜20 に落とした大き目のエアブラシで明るい色を上塗りして補正します。


図 3-5(23.9K) 図 3-6(23.9K) 図 3-7(23.9K)
図 3-4 影のベースを決める
図 3-5 基本色と影の境界をボカす
図 3-6 更にメリハリを入れる

 図 3-4〜3-6 はクリックすると拡大(原画の 1/2 サイズ)しますので、作業段階ごとにどのようにコントラストが変化しているか参考にしてみてください。

図 3-7(24.2Kbyte)
 同じような調子で服を塗ってゆきます。この時大切にしておきたいのは、何と言っても全体のバランスです。全体に淡いなら淡いコントラストで、強いなら強いコントラストで統一しておかないと完成図にしたときにチグハグな感じになります。本来なら背景も合わせて色を決定すべきなのですが、背景はそれだけで大きなテーマですので今回は割愛しておきます(^^;)。また、瞳と髪の毛については塗りかたが少々特殊になりますので、次項で詳しく解説します。

図 3-7 に肌と服を塗り終えた状態を示します。偉そうなこと言っておきながら全体的に「う〜ん?」な仕上がりですが、これはあくまで作例ということでこのまま行きます(^^;)。


図 3-7 肌と服を塗り終えた状態(クリックすると拡大)


[その4]へ続く…

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