Vought Pirates(33K) イラストについて

 海賊シリーズ三代、F4U/F-8/A-7 を並べてみました。ボートの海賊一家には F6U パイレーツ(海賊)や F7U カトラス(短剣)ってのもありますが、いずれもドマイナーな機体なので割愛してます。
 マーキングはすべて架空ですが、それらしいイメージは出したつもりです。F4U は太平洋の色に合わせたダークブルー、F-8 はアメリカの黄金時代らしく派手な塗装、A-7 は海賊稼業にふさわしい灰色迷彩。国籍マークの大きさといい、その時代におけるアメリカという国の勢いが塗装にも現われてるみたいですね。
 艦載機なので背景には機動部隊の曳くウェーキでも描きたかったのですが、画力と気力がが足らず海上とも断雲上ともつかぬものになってしまいました。でも、それなりにいい雰囲気が出て気に入ってはいます。



海賊の血統 ボート F-8 クルセイダー/LTV A-7 コルセア II

 今は LTV と社名の変わったチャンス・ボート社は、第二次大戦以前からアメリカ空母艦載機を作ってきた老舗の飛行機メーカーです。中でも逆ガル翼が特徴の F4U コルセア(海賊)は、第二次大戦中最高の艦上戦闘機の呼び声高い傑作機でした。ボート社はコルセアに限らず、自社の戦闘機に海賊シリーズの名前をつけていたのですが、どういう心境の変化か一度だけ海賊以外の名前をつけたことがありました。それが F-8 クルセイダー(十字軍)です。
 クルセイダーは軽快な運動性能を誇り、ベトナム上空で多数の Mig 戦闘機を撃墜し "Mig Master" の異名を頂く光栄に預かった名機でした。しかしクルセイダーは "Last Gunfighter" とも呼ばれた格闘戦向きの戦闘機です。ベトナムで戦果を競ったマグダネルダグラス F-4 ファントム II に比べると、 レーダーやミサイルの搭載能力が少なく、地上攻撃能力でも見劣りします。次第に厳しくなる軍事予算の関係から、単価の高い戦闘機には万能性が要求されるようになっていました。図体に余裕のあるファントムが次々に拡張され新たな能力を獲得してゆくのに対し、格闘戦に優れるだけの F-8 は次第に旧式化し前線を引退してゆきました。
 ボート社はマッハ3を目標にした F-8 の性能向上型 F-8U スーパークルセイダーを試作しますが、「戦闘機の命は速度」という時代は既に過ぎ、制式採用には至りませんでした。存亡の危機に立たされたボート社の起死回生の秘策が、F-8 を母体にした軽爆撃機の開発でした。これがボート社最後の海賊の末裔、ボート A-7 コルセア II です。

 A-7 は一見すると F-8 そっくりですが、超音速性能は必要ないためアフターバーナーのないターボファンエンジンを搭載しており、胴体は短縮されています。速度が減ったぶん燃費が向上し、長時間の作戦が可能になりました。また、主翼や構造の強化により爆撃能力は大幅に拡大され、核攻撃の能力も付加されました。
 F-8 が十字軍剣士のごとく Mig を相手に機銃とミサイルで丁々発止と立ち回りを演じるのに対し、A-7 の仕事は超低空での地上攻撃です。場合によっては核爆弾を搭載することも厭いません。その名前の示す通り、まさに海賊らしい汚れ仕事です。
 多くの兵器がそうであったように、A-7 が生まれた背景にも米ソの冷戦構造がありました。冷戦当時、西側は数に優る東側の陸上機甲部隊の存在を恐れ、戦闘ヘリや地上攻撃機でその兵力を中和しようと躍起になっていました。低速で超低空を這い回り、爆弾・ロケット弾・機銃ポッドで目につく敵を片っ端から掃討できる A-7 は、ワルシャワ機甲軍に対する米海軍の対抗策でした。そして戦術核兵器の搭載能力は、言わば最後の切り札です。

 幸い、A-7 がその切り札を使うことはついにありませんでした。かつて先祖の F-8 が格闘戦専門ゆえに旧式化したのと同じように、爆撃専門の A-7 の存在意義は冷戦終結とともに薄まり、戦闘・爆撃万能機マグダネルダグラス F/A-18 と交代してゆきました。A-7 最後の舞台は湾岸戦争で、現在は全機が第一線から退役しています。やっぱり、平和な世の中に海賊は似合いません。


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